議会が機能すれば政治は役に立つ ① 車返団地の場合

車返団地の鑑定評価裁判で

府中市敗訴確定、税返還へ



裁判では行政側が有利というのが一般的な印象でしょう。しかし今回、最高裁が市の主張を認めず、住民逆転勝訴が確定しました。

■何が問題だったか


車返団地は

◆都市計画上は→ 容積率が80%に制限されているにもかかわらず、
◆不動産鑑定評価では→ 周辺と同じ200%を前提に評価されている。

そのために、固定資産税が余計に多くとられているのではないか?
そのことに気付いた住民が市に不服を申し立てたところ、都市計画課と資産税課で見解が食い違い、今もそのままです。

まさに縦割り行政の弊害ですが、住民からすると、建替えはままならず、固定資産税は高いまま、という理不尽な状況に置かれ続けるわけです。


■そこで住民が裁判に訴えた


裁判のポイントは、
「容積率が80%に制限されているんだから評価の際も80%で評価すべき」というもの
しかし裁判における府中市の主張は、
「80%か200%かは評価には影響しない」

裁判の経過は次の通りでした

平成20年3月 当該鑑定評価
平成22年9月 一審判決 棄却
平成23年10月 二審判決 棄却

二審までは市の主張が認められました。

しかし一転!


平成25年7月 最高裁判決 高裁差戻し

となりました。ポイントは端的に言うと、
「80%か200%かどちらで評価するべきかも
考慮して審理を尽くしなさい」というもの。

ついで


平成26年3月 差戻高裁判決 住民勝訴

高裁も、市の主張を認めませんでしたが、
それを受けて、なんと市は上告しました。

そしてついに!


平成26年9月 最高裁判決 棄却

最高裁では杉村の議会での質問とそれ対する答弁が証拠として採用されました。
6年に亘る裁判でした。最高裁で一度判決が出ているので結論はほぼ見えてました。つまり市民の税金を使って負ける裁判をやった訳です。しかも府中市民である住民に、最後まで、余計な負担を強いたことになります。


■議会の反応。杉村の対応。


議会の反応は総じて無関心でした。税のことが詳しくわかる議員はおらず、詳しく調べようともしません。住民から訴えがあっても、役所が間違うわけがないくらいにしか思わないのでしょう。ある時点で住民の方が市議会の全会派手紙と資料を送ったところ、問い合わせのあったのは共産党と生活者ネットだけだったそうです。

杉村康之は、まず実態を調査しました。
車返団地は、都市計画上の「一団地の住宅施設」という規制により、容積率が60%に制限されていること。しかし固定資産税額の基礎となる不動産鑑定評価は、周辺と同じ容積率の200%を前提としていたこと。実体よりも高く評価され、固定資産税が割高になっている可能性があることがわかりました。府中市は「建物に関する規制だから土地には一切影響しない」と住民に対して説明していました。

杉村康之は、調査を重ね、東京23区や他市で「一団地の住宅施設」のような地域的な規制が、鑑定評価上、考慮されていることをつきとめました。これをもとに、二度にわたり議会で取り上げ、車返団地の固定資産税が、平成24年度より見直される方向に道筋をつけました。

(2010年3月本会議)
杉村 この団地にかかる「一団地の住宅施設」という規制は、固定資産税に影響するか?
税務管財部長 「個別的要因」だと認識しているので、固定資産税には影響しない。
杉村 仮に市の言う通りだとしても、その説明が鑑定評価書をみても全くわからない。評価の際の判断理由を明確にすべきではないか。
税務管財部長 不動産鑑定基準の改正趣旨に沿って説明責任を明確にするよう、不動産鑑定士と相談してまいりたい。
(2010年12月本会議)
杉村 23区では、一団地の住宅施設も含めた地域的な規制を「個別的要因」ではなく、「地域要因」としているようだが、状況は? また、多摩地域など他市の状況は?
税務管財部長 23区では、平成18年度の評価替えから、地域的な規制を評価の過程に取り入れている。多摩では、八王子市など6市が地域要因として取り扱っている。 
杉村 府中市は今後どう考えるか?
税務管財部長 不動産鑑定士と相談し、平成24年度の評価替えに向けて、「地域要因」とみなして鑑定評価の過程で考慮することを検討していただいている。この結果、固定資産評価に反映することとなる。


■担当課長が言ったこと


このように当初は府中市も、他市の事例が出たこともあって、過去はともかく将来に向かっては制度を改善していこうと、答弁も前向きでした。

しかし住民からすれば過去も大事で、裁判に訴える、ことになりました。そうなると一転、市の態度は硬化し、制度改善も棚上げとなりました。そしてある時、担当課長が思わず泣きそうな声でこう言いました。

「私も市を守るために頑張ってるんです!」
守るべきは市?自分?それとも住民ですか?


■議会は市民の味方


車返団地以外の方は自分には関係ないと思うかもしれません。しかし私がこの問題にこだわるのには理由があります。

府中市の職員の多くはまじめで一所懸命で優秀だと私も思います。しかし人間ですからミスもおかします。ミスをおかしたときに組織や自分の身を守ったりしてしまうのもまた人間です。ただ役所がそれをやると、公をゆがめます。だから情報公開が必要であり、議会のチェックが必要なのです。オカシい時はオカシいとハッキリ言わないといけません。

もう一つの理由は、政治は大事だということをわかってほしいからです。権力を持つ役所がミスし、それをうやむやにすると、市民が泣き寝入りをさせられます。車返団地の例は、住民が勇気をもってオカシいと発言し、かつ、議会が住民の立場にたてば、理不尽な想いをせずにすむといういい例です。
政治とくに議会は、本来は市民の味方なのです。「議会を機能させる」こと、それこそが政治の信頼回復への第一歩だと思います。